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浮ひょう型密度計等の校正 Proofreading of density hydrometers

密度計とは密度を計測する計測器、計量器一般を指します。密度については気体、液体あるいは固体の密度があります。その他にもいろいろな密度があります。 しかし、ここで記述する密度計とは浮ひょう型密度計を含む比重計、酒精計等になります。

計量法では密度浮ひょう、比重浮ひょう、重ボーメ度浮ひょう、日本酒度浮ひょう、酒精度浮ひょうと規定しています。 これらは計量法上の特定計量器でもあり、種類、能力により検定の対象になり取引証明にも使用されます。

計量単位

密度は単位体積当たりの質量になります。
計量単位はkg/m³ になりますが、密度計(以下密度浮ひょうと称します)ではg/cm³ の計量単位が多く使用され、比重計(以下比重浮ひょう)では計量単位は無い無名数で、日本酒度浮ひょうは日本酒度、また酒精計(以下酒精度浮ひょう)は vol%(体積百分率)で表します。

標準の流れ

国家基準
密度の標準は質量と体積からなります。現在は独立行政法人産業技術総合研究所にある、密度を絶対測定した単結晶シリコン球体(直径93.6mm、質量1kg)を特定標準器に指定しその特定標準器から導かれます。

特定二次標準器
特定標準器により校正されたリング状のシリコン単結晶(内径60mm、外径90mm、厚み20mm、質量200g)。校正方法は液中で浮力の測定をして特定標準器と特定二次標準器をひょう量して特定二次標準器に値付けをする液中ひょう量法によります。

常用参照標準
特定二次標準器により校正された密度浮ひょう等。校正方法は液中にてひょう量した特定二次標準器より同じ液中で浮かべ校正した密度浮ひょう等(比重浮ひょう、酒精度浮ひょうを含みます。以下同様)。



比重浮ひょうにt/t0°Cと表記されているとき分子のt°Cは浮ひょうの標準温度、分母のt0°Cは基準とした水の温度をいいます。 例えば比重浮ひょうに多い15/4°Cと表記があれば、分子の15°Cは浮ひょうの標準温度、分母の4°Cは4°Cの水の密度を比重1と定めたことになります。 20/20°Cであれば、分子の20°Cは標準温度、分子の20°Cは20°Cの水の密度を比重1としたことになります。比重t/t0°Cを比重t/4°Cに換算する ときは、比重t/t0°Cにt0°Cの水の比重t0/4を乗じて求めます。

ワーキングスタンダード
特定二次標準器により校正された密度浮ひょう等。校正方法は一般的に比較法を用います。

A. 比較法
校正用液体に2本の密度浮ひょうを同時に浮かべ、その目盛を比較検査する方法です。


B. 衡量法 
比較法に対した検査方法で受検密度浮ひょう等を液中に吊してひょう量し、その液体の密度と受検密度浮ひょう等の浮力を計算し、温度補正と表面張力の補正を 加えて検査する方法です。衡量法での使用液体は一般的に温度と密度の関係が既知である水を使用します。密度浮ひょうが液より軽い場合は胴部に針金等を巻おもりを加えます。

以上が国家標準からの流れです。
密度浮ひょう等のメーカーは計量法による設備基準により密度基準器の基準密度浮ひょう等を備え付けています。

基準器検査

計量法による基準器検査があり、合格した計量器には基準器検査証印が計量器に附され、基準器検査成績書が交付されます。メーカーはこれを基に製造、検査、あるいは校正を行っています。種類は、基準密度浮ひょう、基準比重浮ひょう、基準重ボーメ度浮ひょう、そして濃度では基準酒精度浮ひょうがあります。密度に は液化石油ガス用基準浮ひょう型密度計もあります。これは液化石油ガスメーターの検定に使用します。


特定計量器

本稿で対象となる特定計量器は、密度浮ひょう、比重浮ひょう、重ボーメ度浮ひょう、日本酒度浮ひょう、酒精度浮ひょう、そして液化石油ガス用耐圧型密度計になります。

検定、検査、校正

一般に使用しています密度浮ひょう等は比較検査により検査あるいは校正をします。計量法では器差検定において目盛により検査液の規定があります。この検査液については次に記します。また0.650g/cm³未満の密度目盛の器差検査は衡量法による検査式によります。

比較法 
計量法に規定する検査液の表

検定を行う密度(比重) 検査液
0.650g/cm³ ~ 0.700g/cm³ 石油エーテル、エチルエーテル、ベンジン又はこれらの混合液
0.700g/cm³ ~ 0.730g/cm³ エチルエーテル、ベンジン、又はこれらの混合液
0.730g/cm³ ~ 0.800g/cm³ 酒精とエチルエーテルの混合液
0.800g/cm³ ~ 1.000g/cm³ 水と酒精の混合液
1.000g/cm³ ~ 1.600g/cm³ 硫酸と水の混合液
1.600g/cm³ ~ 2.000g/cm³
硝酸第二水銀と硝酸の混合液ですが沃化第二水銀の水溶液が使用されています
検定を行う重ボーメ度 検査液
0 ~ 65 重ボーメ度 硫酸と水の混合液
55 重ボーメ度以上
硝酸第二水銀と硝酸の混合液ですが沃化第二水銀の水溶液が使用されています
検定を行う重ボーメ度 検査液
-40 ~ 0 日本酒度 硫酸と水の混合液
0 ~ 30 日本酒度 水と酒精の混合液
検定を行う濃度(酒精度) 検査液
0 ~ 65 重ボーメ度 水と酒精の混合液
55 重ボーメ度以上
酒精とエーテルの混合液

衡量法 
計量法に規定する計算式のうち次の式が多く使用されます。
Iε = R - [{(W1+nDT'/980) / (W1+ρ+nDT/980)} (δ-0.0012)+0.0012] {1+0.000025(t-15)}
:器差
R:検定を行う目盛り線の表す密度 (g/cm³)
W1:検定を行う密度浮ひょうの質量(g)
P:検定を行う密度浮ひょうにおもりを巻き付けて水に浮かべ、検定をおこなう目盛り線と液面(視定)とを一致するようにした後、そのおもりのみを水中につるしたときの質量(g)
D:検定をおこなう目盛線のけい部の直径(cm)
T:水の表面張力(N/cm)
T':液面の表面張力(N/cm)
t:水の温度(°C)
δ:温度t°Cのときの水の密度(g/cm³)

表面張力
計量法では表面張力が10N/cmの変化に対して検定公差を超えてはならないと規定しています。
Δd = 10(πRd/980M)
Δd:10N/cmの表面張力の変化に対する示度変化に相当する密度(g/cm³)
R:けい部の直径 (cm)
d:目盛線の表す密度(g/cm³)
M:密度浮ひょうの質量(g)

*計量法での計算式の単位はkg/m³等を使用していますが、ここではg/cm³を使用していますので他の単位もそれに合わせて変えてあります。

標準温度
密度浮ひょうなどは目盛を定めたときの温度を標準温度として表記します。 日本では一般的に密度浮ひょうは15°C、酒精度浮ひょうは15°C、比重浮ひょうなどは15/4°Cと表記しています。海外では20°Cを標準温度としたものもあります。 また、比重の場合、分母は比重1とした水の基準温度、分子は標準温度になります。

温度補正式
JISZ8804 液体比重測定方法 では温度補正を以下の式で規定してます。 比重浮ひょうを標準温度以外の温度で測定を行ったとき、標準温度における比重を求めるのは、その示度に次の補正量をΔSを加えるとしています。

ΔS = 0.000025S(T0-T)+Sβ(T-T0)
S:示度(比重)
ΔS:補正量 (比重)
β:液体の膨張係数(°C-1
T0:浮ひょうの標準温度(°C)
T:測定温度(°C)

式の第1項は、浮ひょう自身の温度補正量で、第1項だけの補正を加えた値は、測定温度における液体の比重であると規定しています。なお、JISK2249 原油及び石油製品 では密度と温度の換算表が、また国税庁所定分析法では酒精度と温度の換算表があります。

一般的な密度浮ひょうの校正

事業所内にて校正等をおこなうとすれば、対象となる密度範囲に対応した標準密度浮ひょうを設備します。この標準密度浮ひょうは事業者においてどの程度の能力を必要とするか検討することも必要です。例えば目量の比較、形状の比較あるいは標準器の校正事業者等があります。

ISOの品質保証規格では、事業所で使用される計量器は国家標準にトレーサブルでなければならないと規定しています。このことは、下位計量器が上位計量器へ正しく連鎖していることを求めていますので、使用実態に合致した標準を設備すれば良いと思われます。

事業所での一次標準は外部に依頼することになりますが、二次標準は上記のように事業所内で校正することが出来ます。この場合は標準器と共に検査液の設備も必要になります。また、事業所で使用する密度浮ひょうを外部に校正依頼をし直接使用することもあります。

なお、比較法による比重浮ひょう、重ボーメ度浮ひょう、日本酒度浮ひょうの検査では密度浮ひょうを基準にし、酒精度浮ひょうの比較検査は酒精度浮ひょうを基準にして検査します。

密度浮ひょうの校正の周期

校正の周期につては計量法では特段の規定はありません。

ただし基準器検査規則にて基準器のみ有効期間を規定しています。基準密度浮ひょう等は8年間になります。また、密度の認定事業者指針では、参照標準の密度浮ひょうは校正期間を5年以内としています。

以上のように校正、校正周期いずれにせよ、事業所にてこれらの規定を設けることが重要になります。

保管

密度浮ひょう等は使用後アルコール、水等できれいに洗浄し、収納ケース等に保管するのが良いでしょう。

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