密度浮ひょう解説 Introduction to density hydrometers
ここでは密度浮ひょうの一般的な理解について解説していきます。
計量原理
浮(ふ)ひょうとは浮きばかりのことです。アルキメデスの原理「浮力」を応用しています。
液体中にある浮ひょうが平衡して浮いた時、浮ひょうの液体中の体積と同体積の液体の質量は浮ひょうの質量と等しくなります。この時にこの浮き沈みを密度目盛にして表してあります。正確には、空気中にあるけい部の空気による浮力と、けい部に働く液の表面張力の影響がありますが、これらの小さい影響を無視すれば以上のようになります。このような密度目盛の浮ひょうを密度浮ひょうと称します。
構造の概要
密度浮ひょうは浮力を保つ胴部と目盛部のあるけい部からなります。材質はガラスでその膨張係数は規程があります。胴部は下端になまり玉などを入れ重さの調整をし、綿、ワックスなどで固定しています。けい部は密度目盛の目盛紙を挿入しています。
耐圧用密度浮ひょう(液化石油ガス用)は高圧下で測定するため、一定の圧力下で使用できるようにできています。また、温度測定も高圧下ですので、耐圧密度浮ひょうの中に温度計を封入しているものもあります。
主な用途
密度浮ひょうは液体の密度測定に使用します。特に石油製品に多用されています。耐圧用密度浮ひょうは密度浮ひょうの一種でほとんどが液化石油ガス用です。
使い方
一般用(常圧用)
試料等をシリンダーに採取し、密度浮ひょうを試料中に浮かべ、静止した後2、3目盛沈め平衡した時点で示度を読みます。この時シリンダーの汚れや、密度浮ひょうの汚れはきれいに洗浄してから試料中に浮かべます。またシリンダーに採取した試料の温度差を避けるため浮かべる前に試料の攪拌をします。
耐圧用
耐圧用密度浮ひょうには専用の耐圧シリンダーがあります。メタクリル樹脂の透明シリンダーを上下鏡板と6本のボルトで締めてあります。上部鏡板には耐圧密度浮ひょうを挿入するねじ穴があります。耐圧密度浮ひょうを挿入後、液化石油ガスで空気を置換し、液状の状態の中に耐圧密度浮ひょうを浮かせ示度を読みます。
標準温度
密度浮ひょうには目盛を定めたときの標準温度があります。例えば「15°C」、「20°C」があります。標準温度は目盛紙に表記してあります。標準温度以外で測定したときは温度補正をして標準温度での密度、あるいは測定温度での密度を求めます。石油製品には標準温度における密度換算のための密度換算表があります。(日本工業規格JISK2249)
次式は標準温度15°Cの密度浮ひょう用いて15°C以外で測定したときの浮ひょう自身の温度補正量です。
Δd=0.000025d(15-t)
Δd:密度
0.000025:ガラスの体膨張係数
d:測定密度
t:測定温度
従って、d + Δd が測定温度における密度となります。
示度の読み方
上縁視定:メニスカス(浮ひょうの水際で液面が盛り上がったところ)の上端で目盛を読みます。「上縁視定」と表記があります。
水平面視定:水平な液面の延長上で交差する目盛りを読みます。「水平面視定」あるいは「水平面示度」と表記があります。
性能
目盛の範囲と目量
(計量単位はkg/m³ですが、密度浮ひょうにはg/cm³の表記が多いので、以下「g/cm³」 で表します。)
一般用 | 目盛範囲: | 0.600g/cm³ ~ 2.000g/cm³の間の一定範囲 |
目量: | 0.0005g/cm³、0.001g/cm³、0.002g/cm³の何れか | |
耐圧用 | 目盛範囲: | 0.450g/cm³ ~ 0.650g/cm³の間の一定範囲 |
目量: | 0.001g/cm³、0.002g/cm³の何れか |
上記は検定対象です。対象外になる目量のものも必要に応じて製作しています。目量 が0.0001g/cm³、0.0002g/cm³、0.005g/cm³等です。
検定公差と使用公差
公差は目量に応じて規定があります。検定公差とは計量法で規定している一定の器差(誤差)許容範囲です。使用公差とは検定後使用中に規定している一定の器差範囲です。
目 量 | 検定公差 | 使用公差 |
0.0005 g/cm³ | 0.001 g/cm³ | 0.001 g/cm³ |
0.001 g/cm³ | 0.001 g/cm³ | 0.001 g/cm³ |
0.002 g/cm³ | 0.002 g/cm³ | 0.002 g/cm³ |
校正の方法
比較法と衡量法があります。
比較法
標準器との比較に依ります。標準器(又は基準器)と受験器を同じ検査液に浮かべ器差検査をします。標準器等は受験器と同じ目量かそれより小さいものを使用 します。標準器等は校正され器差の値が既知のものを使用します。検査液は以下のように計量法で規程があります。
検査する密度目盛 | 検査液 |
0.650g/cm³ ~ 0.700g/cm³ | 石油エーテル、エチルエーテル、ベンジン 又はこれらの混合液 |
0.700g/cm³ ~ 0.730g/cm³ | エチルエーテル、ベンジン、又はこれらの混合液 |
0.730g/cm³ ~ 0.800g/cm³ | 酒精とエチルエーテルの混合液 |
0.800g/cm³ ~ 1.000g/cm³ | 水と酒精の混合液 |
1.000g/cm³ ~ 1.600g/cm³ | 硫酸と水の混合液 |
1.600g/cm³ ~ 2.000g/cm³ |
硝酸第二水銀と硝酸の混合液ですが沃化第二水銀の水溶液が使用されています |
衡量法
密度浮ひょうの質量と体積から検査します。 液化石油ガス用や、検査液が無いものなどは衡量法により器差検査をします。密度浮ひょうの質量と、検査する密度目盛までの体積を量りその密度目盛の値を計算で求めます。そして温度の補正と液の表面張力の補正を加えて器差を求めます。
具体的には、先ず密度浮ひょうの質量を電子天秤などで量ります。次にこの密度浮ひょうを天秤から水中に吊して検査する密度目盛まで沈めます。この時密度浮 ひょうが軽くて水中で浮かないときは密度浮ひょうに鉛などを巻き付けて沈めます。
このようにして検査する密度浮ひょうの密度目盛までの体積を求めます。この体積と質量で密度を計算で求めます。そして、水の表面張力と使用する液体の表面張力による補正をし、標準温度を基本にして器差を求めます。
次式は衡量法による器差を求める式です。
Iε = R - [{(W1+nDT'/980) / (W1+ρ+nDT/980)} (δ-0.0012)+0.0012] {1+0.000025(t-15)}
Iε:器差
R:検定を行う目盛り線の表す密度 (g/cm³)
W1:検定を行う密度浮ひょうの質量(g)
P:検定を行う密度浮ひょうにおもりを巻き付けて水に浮かべ、検定をおこなう目盛り線と液面(視定)とを一致するようにした後、そのおもりのみを水中につるしたときの質量(g)
D:検定をおこなう目盛線のけい部の直径(cm)
T:水の表面張力(N/cm)
T':液面の表面張力(N/cm)
t:水の温度(°C)
δ:温度t°Cのときの水の密度(g/cm³)
表面張力による器差の影響
計量法は密度浮ひょうに働く表面張力が10mN/m変化したとき、検定公差を越える示度の変化をしてはならないと規程しています。次式は表面張力が10mN/m変化したときの変化量です。
Δd = 10(πRd/980M)
Δd:10N/cmの表面張力の変化に対する示度変化に相当する密度(g/cm³)
R:けい部の直径 (cm)
d:目盛線の表す密度(g/cm³)
M:密度浮ひょうの質量(g)
保守
密度浮ひょうの保守は使用後に洗浄し、汚れを落としてしまいます。目盛の表記が紫外線で褪色することもあります。ケース、紙箱、紙筒などに収納するとよいでしょう。